2026/06/04キャッツキル放浪記7
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実は、、、未だ行ったことはないフライの聖地「キャッツキル」。彼の地を夢見て夜な夜なタイイングを続けるスタッフコーヘイの不定期連載コラムです。
🔳第七話 ちょっと寄り道・ウエスタンドライフライ「西部の伝説」
はい、いきなり気味の悪い僕のドアップ画像大変失礼しました(笑)。実はこの画像、アメリカ西部の伝説的フライタイヤー「ジャックデニス氏」の世界的に有名なタイイング名著「Western Trout Fly Tying Manual 1974」の表紙のマネです(汗)。
一度見たら忘れられないインパクトある表紙「Western Trout Fly Tying Manual 1974」。そう今回は、アメリカ東部キャッツキル地方から、ちょっと寄り道して西部ワイオミング州で生まれたスペシャルなウエスタンフライのお話。
本の表紙でも巻かれているこのフライこそ、西部の伝説ジャック・デニス氏が考案した名作毛鉤「ロイヤルハンピー」。ウエスタンドライフライの名作でありながら、実はこのフライの誕生には東部キャツキルも間接的に関わっているのです。というのもこのロイヤルハンピーには元ネタが存在します。
一つがハンピー(左)。こちらは西部で脈々と受け継がれてきたフライの末裔的なパターン。
多量の鹿毛で強力な浮力を保持し、そのコロンとした姿は甲虫などの陸生昆虫から、羽化中に脱皮殻を引きずっているカゲロウ(スティルボーン)にも見えると言われ、言わば何にでも見える最強アトラクターパターンの一つとして有名です。
そしてもう一つが前回ご紹介した、キャッツキルフライを進化させて獣毛革命をもたらした伝説の釣り師リー・ウルフ氏のパターン(右)です。(ジャックデニス氏の友人であり師でもあったそう)獣毛が持つ突出した強靭さと、視認性。こちらもまた世界で最も有名なアトラクターパターンの一つとして君臨する名鉤中の名鉤。
ならば、その二つを組み合わせたなら?という事で1968年に創り出されたのが、このロイヤルハンピー。鹿毛ボディによる抜群の浮力、何にでも見える魔法のようなシルエット、獣毛による強靭さと視認性を持ち合わせた名作が誕生したのでした。
この名著は1974年に発表されてから今日まで多くの人に愛されており、なんと2024年に50周年を迎えています。
そんなおり、この本の撮影のために当時結ばれた現物フライをセットにした50周年記念セットが販売されるとの事を知りました。
僕は早速、御年79歳になられるジャックデニス氏に直接連絡し注文。大変素晴らしい人格者であられ、後日直筆のイラストとメッセージが添えられた2冊の本と、50年前にご本人が巻いたロイヤルハンピー(+その他フライ)が届きました。
本物を見て触って、巻くことが出来るパターンなんてそう有るものではありません。そしてなんと恐れ多くも、メールを通じて僕の巻いたロイヤルハンピーをご本人に見て頂けることに(驚)!!返信は一言「Really good job!perfect!」。ロイヤルハンピーの産みの親であり、生ける伝説ジャック・デニス氏本人から、これ以上無いお褒めの言葉を頂いたのでした。
西部と東部、言わばその両方の伝統を受け継いだ不滅の名鉤「ロイヤルハンピー」。よく浮き、よく見え、よく釣れる。本当に信頼できる素晴らしいフライパターンです。唯一の難点と言えば、タイイングの難易度がとても高いことぐらいでしょうか・・・(苦笑)ご本人にも認めて頂いたロイヤルハンピーをぜひどうぞ。








同じニューヨーク州アメリカ東部の地域としてキャッツキルと釣り歴史的にも深い繋がりを持つアディロンダック地方。そこでヘイスタックやユージュアルなど後世に残るフライを考案し、のちにキャッツキル・フライフィッシング博物館への殿堂入りを果たした伝説的フライタイヤー「フランシス・ベターズ氏」。彼が残したもう一つの傑作がこの「オウサブルウルフ」です。
フロントに備えるウイングと縦巻きのハックル、テール。その構成はキャッツキルのそれなのに、全くもって異質。それもそのはず、白く輝くのウイングはカーフテイル(子牛の尻尾)、そしてツートンになったテールはウッドチャック(北アメリカ生息のリス科哺乳類)が使われており、とってもバルキーな質感。
元々、このキャッツキルスタイルを獣毛へ置き換えた永久不滅の定番パターン「WULFF 」を考案したのは「リー・ウルフ氏」。世界で初めてフライフィッシングベストを考案し、キャッチ&リリースの概念を広め、6ftロッドでアトランティックサーモンを釣り、FFF(現FFI ※FlyFishers International)の設立に深く携わるなど、フライフィッシング界に数えきれないほどの偉大な功績を残したアメリカの伝説的なアングラーです。
1930〜40年代にキャッツキルで釣りをしていたウルフ氏は、鳥の羽で華奢に作られたキャッツキルスタイルのフライの耐久性、浮力、視認性に不満を持ち、あるとき獣毛に置き換えることを思い付いたそうです。そしてグレイウルフ、ロイヤルウルフ、ホワイトウルフと呼ばれる独自のフライパターンを考案。この革新的パターンは、モンタナ州でフライショップと通信販売事業を行う盟友ダンベイリー氏と当時のOutdoor Life誌編集者でありアウトドアライターであったレイ・バーグマン氏によって、アメリカ西部にも広く紹介され、後の多彩なウエスタン(米国西部)パターンへと繋がっていきます。
そして話は戻り、1964年アディロンダック。フラン・ベターズ氏は地元を流れる銘川オウセブルリバーの水性昆虫を長年観察し「多くの虫たちが褐色の胴体と赤味の強い頭部を持っている」という結果と、影響を受けたウルフスタイルを掛け合わせ、特定の虫ではない多種を模倣するアトラクターパターンとして、この「オウサブルウルフ」を誕生させます。
このフライは多くのフライフィッシャーから支持され、その後米国のフィールド&ストリーム誌において史上最高のトラウトフライ10に選ばれる快挙を成し遂げています。
そして、このフライが生まれた「オウサブルリバー」は多くの岩が点在する急流で、日本渓流にも似ている部分があるのだとか。(もちろん行ったことはありません。苦笑)
そのポケットウォーターを攻略するために開発され、高い浮力、視認性、耐久性を持つこのパターンは、ここ日本でも素晴らしい性能を発揮してくれます。
日本渓流をリトル・オウサブルリバーに見立ててミッドセンチュリーな気分を味わう。そんな歴史探訪のような釣りならば、魚の数やサイズだけでない、また異なる釣りの面白さが見えてきます。このようにキャッツキルパターンが原型となりながら、歴史の流れと地域的背景から東部と西部でそれぞれの進化を辿っていくフライたち。調べれば調べるほど面白い話がザクザク出てくる、打ち出の小槌なのです。
つづく
チェストバッグのテストも兼ねて、先日社長(テシマ)とともに訪れた西米良冬季虹鱒釣り場。
僕は初めてだったのですが、自然渓流を利用した釣り場で雰囲気良し、足場が良い所も多く、安全で歩きやすい。駐車場(1日/500円)はすぐそばで、仮設トイレも有りで、とっても釣りがしやすい場所でした。
ウェーダーに着替えていざ出陣!僕はフライウィエトパッカブルウェーダーのパンツモードで軽快スタイル。ソックスは5フィンガーウールソックスが蒸れず、匂わず快適。現在、来季に向けて新色も企画中です。
今回僕が主に使用したフライはブラッシー。スコットロッドと同じコロラド生まれのニンフフライです。1960年代にコロラド州サウスプラット川で生まれたこのフライは面白い誕生話をもっています。
フライを完成させる時間がなく、ウエイトとして巻いた銅線を剥き出しのまま投じたところ爆釣!というなんとも釣り人らしい逸話。この時の銅線が真鍮コーティングされていたため、Brassie 「ブラス=真鍮製」という名前になったんだとか。同じコロラドで作られるスコットロッドとブラッシーのツーショットは兼ねてより撮りたかった一枚。
銅線の重量と、抵抗のないシルエットのお陰でビーズヘッドでなくとも沈みが早いのが特徴。またバランスと沈下姿勢が異なるのか、ビーズヘッドフライを見切るような状況にも強いと感じます。(この日がまさにそうでした)
ロッドはGS803/4ジャパンスペシャル。渓流域において最も汎用性のある8ftという長さと3番というラインウエイトを組み合わせた日本渓流ど真ん中の一本。通常よりややスロー気味なテーパーに調整してあるのか、長めのリーダーシステムでもコントロール性が高いのが特徴、素晴らしい名竿です。
最後にはドライフライを沈めて漂わせるという荒技にて、目の前で完全無視を決め込む40cmクラスの魚も釣ることができ、大満足で西米良冬季釣り場を後にしました。
せっかくの遠出だからグルメも楽しみの一つ!ということで、この日の昼食は車で数分のところにある「川の駅・百菜屋」の椎茸南蛮定食を頂きました。ボリューム満点、オススメです。
英国からの流れを組む東海岸キャッツキルのフライパターンはいずれも繊細&華奢で、メイフライの儚さを見事に表現しているものが多い思います。その特徴の一つが控えめなマテリアル使い。西海岸系のフライに見られるようなバルキーな獣毛などは用いず、鳥類の羽根をパラっと軽く巻いているだけなので、見た目に余裕があり非常にエレガント。
キャッツキルフライの特徴と呼べる構造はいくつかありますが、その中でも見落とされがちなディテールが、僅かに隙間を空けてありフック軸が剥き出しになった謎スペース。僕も初めは何となく軽やかに見せるデザインなのだろう・・・くらいに考えていましたがノンノン、実はちゃんと理由があります。
その理由の一つが、ナイロンやフロロなど開発以前、強度の無いシルク製リーダー(シルクガット)に負担を掛けないために用いられた「タールノット」で結ぶための隙間であったようです。(タールノットで結ぶと、キャッツキルフライでありがちな逆立ち浮きがほとんど無くなります)またウイングをよりフックシャンク中央(後方重心気味)に巻く事で水面でのバランスが良くなる事も理由の一つだったようで、本当に理にかなっているように思います。
後年のキャッツキル・レジェンド「アート・フリック氏」は、この部分をスレッドで砲弾型にまとめており、ほぼ隙間はありません。もしかするとナイロン開発後である時代的なことや、フックバランス、短めのテールなどでバランスを取っていたり独自の理論があったのかもしれません。そんな細かい点に思いを馳せアレコレ妄想するのもまた浪漫です。
この辺りの細か〜いディテールや歴史的背景、時代の移り変わりと繋がりなどは「ザ・ヒストリー・オブ・トラウトフライズ 鱒毛鉤の思想史」でも、非常にわかりやすくまとめてありますので、ご興味ある方には絶対にオススメします。
毛鉤一本に秘められた壮大な歴史と様々な人生。僕のキャッツキル放浪はまだまだ先が長そうです(笑)。
水面に躍り出る鱒達に誰もが興奮するドライフライ。浮力を持続させるためにフロータント(撥水剤)は欠かせません。しかしジェル、リキッド、パウダーと何せ色々種類があって分かりづらい・・・。それぞれに良いところ、悪いところがありますので、簡単にまとめてみました。
ジェルタイプ
メリット:部分塗りが可能。毛鉤の色変化が無い。リーダーやティペットにも使用可能。容器がコンパクト。
デメリット:粘度が高いのでCDCなどの繊細なマテリアルには向かない。
リキッドタイプ
メリット:どぶ漬けで浸透させるため持続力が高いうえ、簡単に素早く浮力を得られる。
デメリット:部分塗り不可。容器は大きめ。含まれるパウダーでフライが白っぽくなる事がある。
パウダータイプ
メリット:パウダーがマテリアルの産毛を起こし、表面張力を最大化。ジェルやリキッドより浮力が高い。
デメリット:持続性が低い。容器は大きめ。パウダーでフライが白っぽくなりやすい。
一応全てのタイプを使い分けていますが、一番愛用しているのはLOON社のジェルタイプ「AQUEL」。せっかく拘って巻いたフライがどれも白っぽくなるのが兎にも角にも嫌な僕はこれ。ハックルや獣毛のクラシックパターンが多く、CDCなどの繊細なマテリアルを使用したフライが少ない事もジェルを多用する理由の一つです。
そしてもう一つ。エキスパートな方達にとにかくファンが多いのがC&F社の「パワーフロート」。ジェルタイプの欠点を全て解消した、という同社の謳い文句通り「どれか一つ選べと言われればコレ」と推す方達が多い逸品です。コンパクトでぶら下げ穴も付いた機能的な容器デザインも素晴らしいです。